藤子・F・不二雄作品氷河期世代
~忘れられた世代~
藤子・F・不二雄作品氷河期世代。コレは僕の造語だ。
意味としてはF作品に見放されてしまった僕(94年生まれ)と同世代のことを指し、F作品に縁の薄かった世代を指す。
縁が薄かったと言えば語弊があるかも知れない。相も変わらず、てんとう虫コミック(以下てんコミ)
のドラえもんは全巻売っていたし、
小学三年生くらいの僕にとって、それが全てだった気がする。
しかし、この時すでにF作品は大量の絶版本が生じており、実は僕が読めたF作品とはほんの極わずかだったのだ。
もし、0年代を氷河期と呼ぶなら、80年代は最盛期だろう。79年にテレ朝版ドラえもんがTVアニメ化。
それを皮切りに、
シンエイ動画を中心に続々と藤子作品のTVアニメ化が進んだ。当時のアニメ事情にはあまり詳しくないのですが、
一時はほぼ毎日19時になると何かしらの藤子作品が放映されていたと言う。
84~91年にかけては藤子不二雄ランド(以下FFランド)が刊行。当時一冊400円前後の子供向けとして極めて良心的価格設定。
最終的に(F作品A作品あわせ)301冊が刊行。豊富な作品ラインナップであった。
まさに80年代は藤子作品の最盛期と呼ぶに相応しい時代だろう。
しかし、87年の藤子不二雄としてのコンビ解消、96年のF先生の早すぎる逝去。
チンプイはついに最終回が描かれることなく、97年FFランドスペシャル『チンプイ 完全版』が刊行された。
しかし、重版されることなく絶版。
97年。当時の僕はまだ3歳だった。藤子・F・不二雄作品が一斉に絶版し始めたのはこの頃ではないだろうか。
ここからは僕の視点になる。
僕がドラえもん以外の藤子作品に触れるようになったのは小学三年生のときだろう。
僕の家から祖父の家は徒歩10分。
そこには伯父(母の弟)が少年時代に集めた漫画本があった。
藤子作品以外だと、ドラゴンボール、うる星やつら、銀河鉄道999などが置かれていた。
その中にあった藤子作品。それはてんコミの『バケルくん』だ。
表紙は取れ、色も変色しているボロボロの状態だったが、二冊あり、夢中になって読んだ。
バケルくん二巻にはジャングル黒べえが収録。詳しくは後述するが、
当時(03年)の小学生でジャングル黒べえが読めたのなんて僕くらいだろう。なんたる贅沢だ。
さらに伯父の部屋には『藤子不二雄少年SF短編集』(※藤子不二雄とあるが、実際にはF作品のみが収録されてた)
が全3巻置かれていた。こっちはバケルくんよりかは状態が良く、
表紙もちゃんと付いていた。ただ、1巻は一部ページが本から取れかかっていたが、読むには支障がなかった。
こちらも夢中になって読んだ。文庫版で刊行していたとは言え、
てんコミ版は絶版本。さらにこれは初版本だった。
ここまで来ると、もう僕はF作品の虜だった。そして、もっともっとF作品を読みたいと思うようになった。
まず手始めはパーマンだ。
てんコミ版パーマンは新装版(正確に言うなら新新装版だが)が03、
04年にパーマンが映画化されたこともあり、比較的安易にてんコミ版を手に入れる事ができた
(3巻だけ少し収録が少ないのだが、細かいことは抜き)
ここから先は強烈な絶版地獄に合うのである。
まず、この時点で、てんコミ版はドラえもん、パーマン以外は絶版。
読むなら、コロコロ文庫だったのだ。当時の僕は小学生。
通常の漫画本より一回り価格の高い文庫本は集め辛い。
よって、重宝したのがブックオフである。ブックオフ巡りで、文庫本をこつこつ集め、
モジャ公、21エモン、エスパー魔美、
キテレツ大百科、藤子・F・不二雄SF短篇集、藤子・F・不二雄[異色短編集]はここで一通り揃えた。
(尚、コレをブックオフ通いで揃えるには、約四年の歳月が費やされている)
しかし、ここで僕は衝撃を受ける。みきおとミキオ、オバケのQ太郎、
新オバケのQ太郎は絶版している上に文庫版も無いと言うのだ。
当時、絶版という概念がよく分からなかった僕は書店で注文して、書店の人に言われ、初めて衝撃を受けた。
さてさて、ここで僕の中で大活躍するのがインターネットである。だいたい2004年頃。この頃は雑誌
『ぼく、ドラえもん』(以下、ぼくドラ)も刊行され、少し賑やかだった頃である。
(何故か、ぼくドラは親に全巻買ってもらえた)
インターネットやぼくドラで僕は“未収録”と言う概念を知ることとなります。
当時、重宝していたサイトが
このサイトです。
(※閉鎖したため、アーカイブ版のリンクを貼ります)
このサイトは当時の僕のF作品購入の指針となりました。
ここでやっと存在を知ることとなったのがFFランドだ。絶版な上、コレクターモノ。
高価なものだと一冊で一万円。得にジャングル黒べえは黒人差別問題が持ち上がり、
わずか半年で絶版したため、相場は15000~20000円はしたと記憶しています。
21エモンなど安いモノでも千円はしました。
この頃になってくると、F作品、A作品の区別がはっきり分かるようになっていました。
まぁ、絵を見れば分かります。当時小四の僕でもはっきり違いが分かりました。
A派F派ならF派。
余談ですが、
僕の場合(世代の問題だと思いますが)だと、“藤子不二雄”
と書店・古本屋でF作品A作品纏めて売られてると違和感を覚えます。
どちらも素晴らしい作品ですが、この纏め方は赤塚作品と石ノ森作品を一緒にされるレベルで違和感です。
話を戻します。そんなF派な僕はFFランドは絶版したが、
A作品だけ復刻し、藤子不二雄AランドとしてA作品のみ復刻したのに軽い憤りすらも覚えてました。
なぜ、FFランドにこだわるのか。
それは収録の豊富さです。コロコロ文庫版キテレツ大百科33話収録。
対してFFランド版キテレツ大百科は40話収録の完全版収録。
パーマンはてんコミだと全7巻。FFランドだと12巻。収録漏れがあるのは言うまでもない。
(ただしこちらはFFランドを揃えても収録漏れがあると言うシロモノ)
ドラえもんに至ってはてんコミ45巻、FFランド45巻と一見すると同じに見えますが、収録内容がまるで異なるのです。
さらに、特出すべきはオバケのQ太郎及び新オバケのQ太郎です。この作品は、TBS、日テレ、テレ朝とテレビ局を超え、
三度にわたりアニメ化されたのもあり、知名度が高いのですが、
この当時は(異色短編集収録の劇画オバQ除く)全てが絶版と言う悲惨な状態でした。
その為、オバQの価格は高く、だいたいFFランド版だと一冊あたり3000円~5000円が相場だったと記憶しています。
新オバQはその後、お小遣いで一冊1000円のてんコミ版を購入。
一巻だけでしたが、当時小五の僕は一ヶ月分のお小遣いがすっ飛んで、それだけを毎日読んでいたと記憶しています。
FFランドは比較的安価なキテレツ、21エモン、海の王子(A氏と共作)などを購入。
安価と言えど、一冊1000円はしたので、上手くやりくりして購入するには時間がかかりました。
当時、F作品以外の漫画を読みたがらなかったからそんな暴挙に出れたんだと思います。
特にキテレツは三ヶ月間何も買わずに全巻セットを3000円で買ったのを記憶しています。
さてさて。ここまでやっていながら、F作品はまだまだあるんです。
ポコニャンはFFランド版を二巻セットで1000円で購入(貸本屋落ちだったので安かった)
一番楽だったのはエスパー魔美です。文庫版全巻購入で全て揃うと言うシロモノ。
完全版チンプイは中古でもなかなか見つからない上に、4巻は特に見つからなかった。見つけても高い
(セットで5000ー6000円はした気がする)
チンプイ・オバQについては本当に腹が立ったのは当時発売された『もっとドラえもん』です。
2ページに渡り、『藤子・F・不二雄 厳選!! まんが名作ガイド』と言う特集記事にて、
新オバQ及びチンプイが2ページに渡り特集されてましたが、これは絶版本。
イヤミしか感じませんでした。
そのもっとドラえもんも殆ど未収録作品目当てで購入したのですが、
後に発売されたカラー作品集六巻にてその全話が収録。新手の詐欺に引っかかった気分でした。
ところが、ある日偶然ブックオフで二巻のみでしたが完全版チンプイが250円と破格の値段で売っていたのを見つけ、即刻購入。
そのときはドキドキが止まりませんでした。
06年にはみきおとミキオの文庫本がようやく発売。525円と言う価格は今までと比べ、
安い方でしたが、当時はそれを購入した途端に所持金が16円になったのを覚えています(当時は小六)
T・Pぼんに関しては、最初中公文庫にて購入していたのですが、前述したサイトから、
なんとアイランドコミックス版T・Pぼんの方が収録数が多いことが発覚。
なんとコレは所謂コンビニコミックで、
通常コミック版より明らかに紙質も劣る上に表紙もいかにもコンビニコミックと言う感じだったのですが、
当時、同じ収録数を誇る希望コミックス版T・Pぼんはプレミア価格で全巻5000円はしたので、
このコンビニコミックはめちゃくちゃ重宝されてました(特に三巻と五巻)
ただ、これでも5話の収録漏れがあり、こればかりは当時の雑誌をあさらないと出てこない状態でした(詳しくは前述したサイトを参照)
その他、未来の想い出は何故かヤフオクで500円と比較的安価で落札。中年スーパーマンやミラ・クル・1等は高値の為購入を見送りました。
また、オバQに至ってはFFランドを購入するよりも国立国会図書館にて当時の雑誌を複写する方が安価なのに気付き、
当時小学生の僕は早く大人になって国会図書館に入ることばかり考えてました。
その間、ドラえもんに限ると、順番が前後しますが、
ぼくドラで未収録作品集、カラー作品集、ドラえもん+、ぴっかぴかコミックス等で大分未収録作品はカバーされていましたが、
それでも尚、大量の未収録を残した状態でした。
07年には『熱血!!コロコロ伝説』が刊行。今更になって新オバQが一巻のみ復刻。前述の通り、
一巻は持っていたのですが、さらにオバQが読めると勘違いし、ろくに調べもせずに購入。
そして全く同じ収録内容に後悔したのを覚えてます。
尚、実際はいつまで出版されていたのか不明ですが、
新オバQに限っては97年に絶版したと考えると、約10年間オバQが読めなかったと言うことになります。
さて、ここにきて09年に衝撃的ニュースが飛び込みます。
それは藤子・F・不二雄全集の発売です。ドラえもんは全話完全収録。
一部のセリフの改変はあったものの、基本的にはオリジナルのままの収録。
さらに、復刊は絶望的とされてたジャングル黒べえ・オバケのQ太郎も完全収録。
この瞬間、藤子・F・不二雄作品氷河期が終わったのだ。
しかし、僕世代。僕世代だからこそ叫びたいのだ。
遅いわッ!と。
遅すぎる。僕は小学校入学が01年。中学校卒業が10年。09年は中学三年生だったのだ。
要所要所、欲しい巻(ドラえもん幻の最終回やガチャ子回、T・Pぼんラスト5話など)
は買いましたが、今までのもあって全巻購入する気にはなりませんでした。
全集も不満を述べるなら、明らかに価格設定が子供向けでない点がある。
確かにあの分厚さに見合った価格設定なのだが、子供向けに工夫はできなかったのかな?と、疑問が残る。
恐らくこれはコンビニコミックでカバーしているのでしょうが、なんだかなぁって気分にはさせられます。
正直、僕に言わせると、出版する気が無いなら、ネットで配信するとか何かしらの対応が欲しかったのが本音です。
このような経験があったからこそ、
例えば、赤松健氏のJコミ改め「絶版マンガ図書館」
の偉大さを感じます。このような活動により、
著者もファンも報われないような悲惨な絶版地獄を少しでも食い止められて欲しいものです。
また、アニメも同様に、もう少しTSUTAYAなんかは頑張って欲しいなぁ。と言うのは傲慢でしょうか。
特に90年代~00年代前半の作品は弱い。やっぱり、DVDも廃盤にするくらいなら、
いっそネットで無料配信してほしいものです。それもできる限り子供向けなら子供が見やすいように。
そんな願いを込めて、ここで文章を終わりにします。
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